阿佐ヶ谷chillout

何もないから寒い

僕がカレーを作るようになるまで

カレーを作らなければならない。



生活はできそう?

その道へ入るのは簡単だった。
お金が、ないのである。

原因はわかっている…度重なる外食が原因だ。漫画やゲーム等に使うお金を全部「しょうがない」で済ませるとしたら食費以外に削るものがない、という部分もあるにはあるが。

  • 単純に銭湯や喫茶店が好きなので外で過ごす時間が長いこと
  • 平日の仕事の中でのストレスを外食で発散していること

この二つが大きなポイントだ。
朝飯は食べたり食べなかったりで、昼飯はほぼ確実に外食になる。問題は晩飯、ひいては仕事終わりの時間の使い方によるものである。


これらの問題を同時に解決するために頭をひねって見つけた、たったひとつのソリューション。
つまり「家に帰れば美味しいご飯が待っている」という状況を作り出せばいいのだ。
自炊ならばちょっといい肉を買ったとしても、基本的に外で食べるよりも安く上がることは間違いない。
今住んでいる荻窪は銭湯もそんなに近くないので、一度帰ってしまえば外出する気力は失われる(体調悪いと感じるときはなるべく意識して銭湯に行くけど)。


しかし、ここで最大にして最硬の壁が立ちはだかる。
「めんどくさい」のだ。めんどくささは人生最大の敵である。
特に平日、家に帰ってきてから料理を作るというのはとてつもない労力だ。仕事が暇な週に食材を買い込み自炊モードにシフトしたものの、その次の週で仕事が忙しくなって冷蔵庫の食材を全てダメにしたことが人生で8回以上ある。それを学生の時代から何度も繰り返している。


原因はわかっている。「決断疲れ」だ。

note.mu

一応デザイナーとして業界の端で生活をやっていることになっているため、この記事はとても身にしみる話だった。そして同時にある種の諦念も見えてきた。
大人になれば、会社での待遇がよくなれば、生活力が上がれば、家に帰った後でも自炊ができると思っていた。違うのだ。
精神の、決断力のキャパシティは、もうこれ以上増えない。
服を同じものにするなどのライフハックも重要そうではあるが、元手となるお金がないゆえ今は「買い足す」というカードは切れない。
今あるものでできることを見つけなければならない。つまり最小の手間で美味しいものを用意しておくこと。


いつも通り前置きが長くなったが、結局カレーを作ることにしたのだ。

カレーを作るなら日曜日だ

疲弊した心体を癒すための「閉日(とじび)」、つまり全く家を出ないと決めた日でも、うまいものを食べたいという欲求はある。その結果としてよく休日の夜中にラーメンを食べに行ってしまうのだが、今回はなるべくそれも防ぎたい。
欲求はあるが時間と決断力がない平日に比べて、土日は時間と決断力がある。家で一食作るくらいのことを「やっていく」のは可能だ。

平均的な日本人なのでカレーはもちろん好きだが、比べるなら普通の人よりも好きだと思う。小さいころは男三人兄弟だったので実家では晩飯に毎回大量のカレーが作られたこと、小学生のころは親父にキャンプや野外活動、レクリエーションに連れまわされていて、毎年夏休みのたび3回は飯盒炊爨+野外調理のカレーを作っていたこと。
だから僕にとってのカレーは「店で食べるカレー」ではなく、家庭で作るルーカレーが絶対だ。

ルーカレーの持つ制限はふたつ。

  • 家で作らないと食べられない。
  • 一度に大量に作るしかない。

今回の自炊する目的と重なっているので一つ目はクリア。今回は土日を使って平日夜のごはんを作り置きすることが目的なので、二つ目も完全にクリアした。
ちなみに「お金がない」「めんどくささに勝てない」という大変ネガティブなところから話が始まっているので、当初はこの話をブログに書くつもりは一切なかった。なので実際に作って試した行程を書いてはいくが写真が一切ないので、そこはごめんなさい。今回の記事で料理行程を伝えるのに写真がめっちゃ重要なことを身をもって知りました。小林銅蟲先生…。

やっていく

僕の身体に刷り込まれたカレー作りの手順はこうだ。

1.じゃがいも・にんじん・玉ねぎ・[なんらかの肉]を任意の大きさに切る
2.[なんらかの肉]と玉ねぎを炒めて火を通す
3.水を加えて30分前後煮る
4.ルーを加える
5.ごはんにかけて食う

カレールーの箱の裏面に書いてあるような作り方だ。これを日曜日の昼にとりあえず作って食べて、まあうまい。[なんらかの肉]の部分には、最初は家に冷凍してあった鳥もも肉を使った。

そしてこの手順をさらに省略していく。
ちなみに今回わかったことだが「手順を試しに減らしてみる」のも決断のひとつであり、決断力に余裕があるときにしかできない。「試す」という行為には余裕が必要なようだ。

1.じゃがいも・玉ねぎ・[なんらかの肉]を任意の大きさに切る
2.全てを鍋に入れ水を加えて30分煮る
3.ルーを加える
4.ごはんにかけて食う


ここまで削れば平日にも調理ができるかも、という部分まで削った。肉はブラジル産の解凍鳥もも肉(グラム59円)で続行である。
調理器具としてはIHが一台と、鍋として使える深めのフライパンひとつしかなく、玉ねぎと肉を炒める行程がかなり面倒に感じたこと、にんじんを抜いたのは食べている途中「にんじんがスプーンの上に出てきても別にうれしくない」ことに気づいたことが大きい。
肉じゃが作りの最後にカレールウを加えているだけみたいになったが、ちゃんとカレーの味になったどころか最初に作ったものと味はほとんど変わらなかった。カレールーはすごい。

で、この手順のカレーを二回ほど作ったところで「飽き」が来た。
手順が悪いというわけではないと思う。だいたい一回の調理で5食分くらいになるので、10食ほど食べると飽きるのだと思う。単純に味変の必要があるのだ。
たいていはここで飽きてやめたり忙殺されて自炊どころではなくなるのだが、平日そこそこ暇だったり土日に家でカレーを作るというのがだんだん習慣づいてきていたり給料日までまだ日があったりと色々な状況が重なったのでカレー作りを続行した。
一番簡単なのは[なんらかの肉]の部分を変えることだろう。食材の種類を変えずに味の大幅なアップデートが期待できる。

君の好きなぶた

疲れている時こそ豚だ。ちょっと高かったがSEIYUで豚バラブロックを購入し、カレーを作った。

1.じゃがいもは小さめ、玉ねぎは細く、豚バラブロックを小さめに切る
2.全てを鍋に入れ水を加えて30分煮る
3.ルーを加える
4.ごはんにかけ、ゆで卵をのせて食う

これが当たった。豚バラブロック、メチャメチャにうまい。
部位とか全く気にせずノリだけで買ったけど冷静に考えてチャーシューのソレであった。食べてから気づいたが、こういう肉が食べたくて僕はmazeruとか宮郎に行くのだ。形こそ違えど同じ部位が家で食べられるという喜びがようやくわかってきた。人間一年生だ。
今のところカレールー以外の味付けがなにもないので、カレーというよりもカレー味の角煮という感じだ。そう思っている以上はレシピもそのように最適化されていく。調理中に思っていたことは「豚バラブロックを小さめに切ればごはんがいっぱい食べられるな」だ。

これは味変の手順を間に挟むことで三回食べ続けることができた。具体的には二回目の時点で一度抜いていたにんじんを復活させてみた。とはいえ角切りしても嬉しくないことは明らかなので、今度は薄めのいちょう切りで味が変わるかどうかを確認した。
結果、味の変化は体感できなかったが(若干甘くなった気がする)、何か変わったか探りながら食べることで飽きるまでの期間が伸びたこと、また手順がひとつ復活したのにめんどくささが減っていることが体感できた。カレーを作る行程がだんだんと習慣づくことで総合的にかかる決断コストが減っているのだ。
つまりここからはカレーをおいしくしていくために手順を加えていくことができるということか!



つづく。