阿佐ヶ谷chillout

何もないから寒い

日高屋を無視していた

荻窪の駅前に日高屋があるのだが脳がその存在を認識していなかったことに気づいたのはつい先日のことだ。駅前に日高屋という文面を見ただけで、なんとなく脳内には「ああどこにでもあるやつね」という反応が浮かんでくるのだが、実際に店へ入ったことはないように感じた。一度も入ったことがないわけではない…はず、と思うのだが。というのも駅前の日高屋の、僕は毎日その横を通るのだ。通勤ルート上に日高屋があって、信号とのマッチアップで行きは下振れがある、即ちその道を通らないこともあるのだが、帰りは確実に通る。毎日必ず1回、多くて2回顔を合わせているはずなのだ、この日高屋と。荻窪駅前の北口には他にも松屋、クイックガスト、富士そばと安いチェーン店が揃っている。SEIYUの裏手を抜ければマクドナルドがあり、そっちの方にはミスド吉野家もある。それらに比べれば若干値は張るがおいしいよねというお店だって荻窪にはいっぱいあるが、安いチェーン店で済ませよっかなというタイミングも必ず存在する。早い時間に終わった飲み会の後なんかがそうだ。胃はもっと食べ物を求めているがさっきまで飲んでいたアルコールの価格と、胃の空きを考えると700円の鶏白湯ラーメンとはいかない。店に入ったが最後どうせ席に着いてから煮卵をつけるか20秒くらい悩んで結局つけるから財布から消える額は絶対800円になるんだ。引き寄せの法則。だから今日は財布から使っていい額はワンコイン。でも自分の腹に今日は何腹なのかを訊いてみると、この日は明確に麺を求めている。中華由来の、卵を使った黄色いちぢれ麺を熱い油から箸を用いて救出し、それを口内へと、そして胃へと放りこみたい。そう思いながら前述した安いチェーン店から選択しようとすると、無いのだ、麺が。富士そばではダメだ。富士そばは朝焼けを見ながら食うせいろが一番うまい、って気をぬくとどんどん話が逸れるけれども、「財布に余裕がなく」「胃もそこまで空いていないが」「麺を食べたい」という条件のとき、そそくさと家に帰ってインスタントラーメンを作るか、明日こそ節制しようと心を決めながら鶏白湯ラーメンを頼み、ついでに煮卵もやっぱりつけてしまう、そのふたつしか今まで選択肢は存在しなかった。しかし先日の飲み帰りの折に、ついに気づいた。ワンコインでも夜中にラーメンが食べられる、日高屋という存在が、いたのだ。僕の通り道に。平然と、昔からそこにあったように!僕の心は感動した。長年のこの問題に終止符が打てるかもしれない。外の食品サンプルを眺め、意を決して店内に入り、全員食べ終わった後でタバコを吸いながら追加のオーダーをなにひとつしない大学生の集団によるギャハギャハという喧騒を背中に受けつつ、とんこつラーメンを注文し、ついにそれが目の前へと来て、食べる。

会計を終えながら、今度は迷うことなく鶏白湯ラーメンを食べようと思った。なんか違った、思ってたのと。よかったらどなたか日高屋のおすすめメニューを僕に教えてください。お待ちしております。