阿佐ヶ谷chillout

何もないから寒い

仮面ライダービルドが創った明日

仮面ライダービルドが終わった。
数年前まで阿佐ヶ谷に住んでいた頃は、結局テレビの配線が分からず配信サービスも今ほど充実していなかったため、ウィザード〜エグゼイドまでは全く観ていなかった。荻窪に越してから鎧武とエグゼイドを観て、その熱のままビルドを一気に観てエボルト編に入ったあたりからリアルタイムに追いつくことができた。
リアルタイムに最終回を視聴したのは仮面ライダーキバ以来ちょうど10年ぶり。ディケイドへの期待が大きすぎてキバが40話くらいの頃に一気に観たのを覚えている。一応旧平成は全て、新平成はフォーゼウィザードゴースト以外は全部観ている。
感想の記事なのでネタバレがあります。いちおう。




ビルドは僕らの観たかった「平成ライダー」だった

よかったと思うポイントを挙げていく。

・序盤で新フォームを出す間、話があまり動かない部分を謎解きに使うことでダレさせない

近いところではエグゼイド、遠くではアギトにも通じる部分。スマッシュとはなんなのか?桐生戦兎は何者なのか?ナイトローグとスタークの正体は?謎が謎を呼び、呼びが呼びを謎ぶ。
ボトルによる無数のフォームチェンジそれ自体に意味はなく、ボトルを集めること自体が目的だったという物語の推移には全く無駄がない。ヤバくなったら飛行能力のあるボトルかスチームガンで逃げればいい。戦闘部分に関する細かいロジックを目の前のでかい謎でごまかす。序盤は正直、子供が観てたらどう思うかをとても考えてしまった。これベルト売れてるのか?と不安になって、らだに「これ大丈夫なのか?」って聞くたびに「大丈夫だから早く続きを見ろ」と言われていた。

・2号ライダー、バージョンアップによる新フォームの数の管理のうまさ

ライダー多す…とならない絶妙な数のマネジメントだったと思う。ライダーシステム自体が兵器として軍事に利用される設定によって、変身する人物の重み一つ一つが大きくて忘れがたく、そこに戦兎以外へもバージョンアップが重なって最後まで戦い続けるヒーローとして完成していった。強さを表す指標として新装備の有無ではなく「ハザードレベル」という概念があったのがよかったと思うが、見た目に反映されない数値で戦闘力が決まる設定自体は人体的にも物語の設定的にも諸刃の剣だったと思う。
ライダーに変身する人物の中ではマッドローグに変身する内海さんが一番シナリオ上の重みが軽かったので、後半もっと話に絡めてもよかったとは思うものの、キャラクター的にギリギリまで裏切りの裏切りを悟られないようにする必要があるのでどう動かすかは本当に難しかったと思う。

・徹頭徹尾メカモチーフなので変身シーンやガジェットに違和感がない

メカっぽさが男の子にウケるという不文律は理解できるものの、作中で使用されるガジェットは相応の理由が必要だと思っている。それは平成ライダー以前に観ていたメタルヒーローシリーズの、テレビマガジン等に載っていたスペックデータに目を輝かせていた幼少時の記憶が原因かもしれないし、いち企業の開発したメカであるという位置付けがドラマ的にもハマっていた555の影響かもしれない。そしてこれはゴーストやウィザードを少しだけ観ていてあんまり受け付けられなかった部分でもある。
その点ビルドは最初から最後まで発明品だった。ラボの規模等はともかくメカならメカで揃ってくれていると単純に嬉しい。節々にある工業製品っぽさもすごくよかった。逆にエボルドライバーはもっともっと禍々しくてもよかったと思っているが、火星の文明を滅ぼすレベルの宇宙人の禍々しさって共通言語で表現しにくいよね…。


しかしこれらのビルドのよかったポイントに「目新しさ」はなかったように感じている。謎解きをメインに話を動かす序盤からパワーアップアイテムの争奪戦になるのも、パワーアップしたライダーたちが横並びに佇む情景も、工業製品モチーフなのも。だがそれらはどれも「平成ライダー」を今まで僕らが楽しんできたポイントで、それらが上手く使われているのだ。大人目線の気になるポイントを埋めるのが上手すぎて、本来のターゲット層である子供が楽しんでくれているのか不安になるくらいには、だ。
今思えば「僕の考えた平成仮面ライダー」の総決算なシナリオだったように感じている。少なくとも僕にとっては…。

そして、カシラが居たから

僕が平成ライダーについて語るとき、物語の上手さと演出、変身アイテムやライダースーツのデザインのほかに圧倒的な「キャラ愛」が混じってしまう部分がある。愛した人を失いながらも過去を乗り越えて仲間の為に戦い抜いた、仮面ライダー剣の橘朔也と、どこまでも自らの信念と愛に殉じた、仮面ライダーキバの紅音也の二人がそうだ。
正直ビルドも武田航平さんが出ると聞いて急いで観はじめたのだが、期待通りの…いや期待以上にカッコいい"カシラ"がそこに居た。本当によかった。4Uの単独ライブに連れて行かれて以来なぜか今年はずっとナナシスとデレマスを追いかけている僕自身の境遇ともマッチしたと言っていい。
気になりだした声優さん(山下まみさんのことです)を追いかけて初めて主演舞台を観に行ったり、レギュラーをやってるネット番組の公開生配信にも行ったりして、どういう気持ちで追っていいかわからないがとにかく追いたいというこの衝動の扱い方を、カシラが教えてくれたと言っても過言ではない。
そして三羽ガラス一人一人の死を真っ向から受け止めて、カシラ…猿渡一海は最後まで心火を…命の火を燃やして戦い抜いた。正直あの引きで一週空けるのはマジでどうかと思う*1し、気が気じゃなくて映画も初日に観に行ったが…最期まで火を燃やしたからこその"カシラ"だったと今では納得している。プレミアムバンダイでブリザードナックルも注文したので、どこかのタイミングでビルドドライバーを買わなきゃいけなくなった。

ビルドの作り出した明日を僕らは生きている

後半のvsエボルトになってからの万丈憑依や戦兎憑依が壮大なフリでしかなかったことや、結局最後までロストボトル争奪戦に終始してしまった部分、ヒゲファッションショーにぶっちゃけドン引きした*2こととか、後半は流石に杜撰だなあと感じたりあんまり面白くないと思ってダレた部分も正直あるにはある。僕が気になってないだけで他にも細かい設定のアラは精査すればするだけたくさん出てくるのだろう。
だがビルドが目指したものの中でも、様々な葛藤や技術発展の末に「ラブアンドピース」と言い切ってしまう明るさと、あらゆる犠牲を払いながらも底抜けにハッピーエンドな終わり方だったことが、僕の宇宙一好きな漫画「トライガン」で描かれたような"確かなヒーロー像"に繋がっていて、そこをよしとしてしまえるかどうかが最終的な評価になる。
僕は、それでよかったと思う。前述した大人を楽しませるための構成と、自分の中でデカすぎるカシラの存在と相まって、仮面ライダービルドの評価は100点満点中3億点とします。
まあ龍騎を初めて観たときの衝撃とは比べようもないし、オーズ最終話とかに比べたら最終回の感動値自体はそうでもないんだけど、剣や響鬼と同じ「好きか嫌いかで言ったらメチャメチャ好き」というポジションに収まりそう。ジオウへの繋ぎ方も含めて、平成ライダーの19作目が仮面ライダービルドで本当によかったと思っています。

そしてジオウへ

完璧にビルドがバトンを渡してくれていて何なんですけど、逆にジオウには期待しないようにしようと思います。ディケイドの時に過去作品へのリスペクトを期待しすぎてしまったのもそうだし、ビルドがシナリオ構築的に今までの平成ライダーのいいところをうまく使ってくれたことは忘れたくないので、あんまりそういう比較をしたくないというか。
仮面ライダーと一緒に成長してきたと言っていいくらい世代的にも情熱的にも追ってるんだからどうしたって期待してしまうので、めんどくさいオタクの感情を抜きにして観たいなと理性ではわかっているんですが…。20周年の節目に成長するタイプの主人公*3を置く時点で優勝でしょ、くらいの感じで行きたい。
ディケイドの脚本があまりにもしょぼかった分、次の年のWがハチャメチャに面白かったという部分もあると思うので、なんなら今から21作目に期待しつつ、来年のVシネ枠のクローズや、ハイパーヒゲバトルDVDを待つことにします。グリスブリザードのフィギュアーツも買わないとな!

*1:そのせいで甲子園への、ひいては野球への憎しみが一段階強くなった

*2:万丈構文も僕は全然面白くなかった、メチャクチャシリアスなシーンで笑う文化はしんどい

*3:見るからにたぶん電王の良太郎やゴーストのタケルみたいな感じっぽい